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 インデペンデンストレールもしくはフォレストボードウォークは、アメリカには数多く見られます。私はコロラド州と、ネバタ州そしてカリフォルニア州の様子を見てまいりました。これは特別な施設ではありません、パブリックな施設であり、障害を持った人たちがバリアフリーという何不自由が無い環境に甘えるのではなく、またバリアフリーに頼り、自らの潜在的な可能性を失わないように、精神的に心を奮い立たせる、自ら体を鍛えるフィジカルチャレジャーであってほしいと願う施設なのです。私たちも登山を行う場合、それなりの訓練をして挑みます、しかし、結果として山頂に到達できないこともあります。
「よし、次は・・・」と考えるのがフィジカルチャレンジだと考えてください。

 車椅子を必要とする方も同様に、訓練無しで山を登ることはできません、しかしがんばって訓練さえ積めば登れる環境をを、インデペンデンストレールといいます。昨今、車椅子の方がボランティアによって山に登られている光景を見るようになりました。とても素晴らしいことです。もう少し考えると自分の意志で登らせてあげたい、自分の意志で自然散策ができたら、より自然を満喫することができるのでは無いかと。「そうだ、今日、あそこのレールに行こう、紅葉が綺麗だろうなー」と思いついたら自分で行ける場所があったら、どれだけ素晴らしいことでしょう。
 バリアフリーは必要です。必要だからといってバリアフリーに頼っていては、どこへも出かけることができません。バリアフリーは施設の名称ではありません。ちょっとした気遣いだけでもバリアフリーになることもあります。

 例えば混雑しているレストラン等で、車椅子の方が入場されてきたのを感じたら、気づかれないように無意識に椅子を手前に引き会話を続けることもバリアフリーとなります。砂利道で、あなたが車椅子の方の少し前を歩いていたなら、大きめの石を何気なく蹴るだけでもそうです。
このインデペンデンストレールは、車椅子の方が楽しむだけでなく、無意識にバリアフリーに協力できる人間を育てるためにも、大切な役割を果たします。それは車椅子の方が汗を出して登坂している姿を見て「押しましょうか」というのではなく努力を感じ取り共に感動することや、気づかれずに障害物を除くことが、私たちと車椅子を必要とされている方の間にあるバリアを取り除くことになります。
 子供達は冒険が大好きです。キャンプや野外活動となれば、目を輝かします。そんな場所に車椅子の方はいますか? 
現状としては残念ですがお会いすることはできません。よって子供達にとって車椅子の方と接する機会とは特別な場所、特別な日と無意識に感じ取っています。「自然を大切にしよう」「草花を踏まないように」と学習しても、障害者とどう接するかは、ここでは学ぶことができません。自然を大切にするという行為は弱者を守るという行為にも繋がります。
だからこそ、そんな環境に車椅子の方も共存し当たり前のように接する方法を学んで欲しいと考えております。
これもインデペンデンストレールの役割です。

 最近野外学習施設や宿泊施設にはトイレがバリアフリーで作られています。よって学級単位での野外活動も盛んになってきつつあります。それによって車椅子の方も現地に出向き、同級生と宿泊する楽しみを味わうことができます。ここでもう一つ頑張りましょう、宿泊施設だけでなく、同じように森に入れたら・・・ファイアーサークルまでアクセスがあれば・・・この「もう少し」について考えて下さい。
この「もう少し」もインデペンデンストレールの役割です。
 このインデペンデンストレールは橋桁をかけたり、地面に直接設置されたりしてのびて行きます。この成長する過程もインデペンデンストレールの大切な行為なのです。
 ここにこられた方は○○円で板を買います。そしてインデペンデンストレールの先端に打ち付けます。メッセージを加えて、これで募金とボランティアと数センチの延長工事が完了したことになります。それはクラスの友達のためにのばした道かもしれません。「この道を造ろう、のばそう」と感じ取ったからこそ、行動に移したのでしょう。この行為によってインデペンデンストレールは自立した資金の調達によって、ゆっくりだが永遠に延び続けます。そして募金され、打ち付けた方の心にもインデペンデンストレールの必要性が刻まれます。「地元にも作りたい、また打ち付けたい」きっとそう感じることでしょう。これがインデペンデンストレール・ムーブメントであり、この小径のもう一つの大きな効果なのです。

この小径は自然を大切にする全ての人たちに感動と勇気を与える小径なのです。 インデペンデンストレールは板道だけではありません。
その道がのびる成長過程の中で、考えられる多くの施設も作られて行きます。車椅子の方が楽しめるキャンプ施設や、野外の木陰を利用したフォレストライブラリー、展望の良い所に作られた休憩所、ちょつと勇気を出せば楽しめるボルダリングウォール(壁登り)、子供達が楽しむアスレチック(子供と車椅子の方との接点作り)、鳥の目で見れる様に森の木々に渡されたスロープによる櫓、池で釣りを楽しむ桟橋や、数え切れない施設が生まれます。春夏秋冬の自然を楽しみ、自ら努力をし、そして自然の中に作られた施設を利用することになります。
子供達と車椅子の方の笑い声がきっと絶えないことでしょう。

 インデペンデンストレールは自然そのものです。川や花や木があることによって鳥が寄ってくるように、子供達や、インデペンデンストレールをのばすボランティアが集まり、そして車椅子を必要とされる方や、お年寄りが集まってきます。森は人を癒し、子供の無邪気な心は車椅子の方やお年寄りを癒し、そして子供達はお年寄りや車椅子の方に多くの生き方を学びます。これが自然の恩恵なのでしょう。
 まるで夢のような話しですが、アメリカではこの全てが市町村の支援を受け、募金やボランティアによって施工され、運営されているのです。
 日本には1999年岩手県大東町にその第1号がスタートしました。2002年春には新潟県湯沢町の苗場で第2号が始まり、第3号は岩手県の平庭高原で2003年6月スタートいたします。
 木道は日本中に沢山あります。湿原や高山植物園、観光地には古くから作られています。しかし、その木道は車椅子で楽しむことはできません。車椅子の車輪の幅で作られていないのが現状です。その木道は、観光客がこれ以上自然破壊をしてはならない、させない、といった目的のために設置されたものです。だからトレールの真ん中に「自然を大切に」といった看板が恥ずかしそうに立っています。そしてその看板すら車椅子の進入を妨げていることを自覚しなければならないのです。
 この木道も含む総ての遊歩道が、私たちがこれから行うインデペンデンストレールの普及によって、きっと改善されることでしょう。
そして、環境保全と障害者問題は類似していて、決して単体では考えられないという結論を出してくれることでしょう。